【開催報告】農村にしごと唄WS〜冬*もみすり唄の回〜
冬の農村は凍てついて、静かに静かに春の訪れを待っています。
2月も終わり、草木萌動(そうもくめばえいずる)。寒さが残るなかにも、ほんのりと春の兆しがみえてきました。
2月6-7日に開催した「農村にしごと唄ワークショップ〜冬*もみすり唄の回〜」のご報告です。
昨年6月から開催してきた田んぼ×仕事唄の全3回ワークショップもとうとう最終回。
お米は田植えをして稲刈りしたら食べられる、、わけではもちろんなく、お米を包んで守る「籾」を摺ってあげないとまだ食べられません。
この地味で地道な工程は、ずいぶんと早いうちから機械化されてきましたが、かつては日々こつこつと臼をまわして摺っていたのでしょう。「もみすり唄」でも唄いながら。
籾摺りの基本の道具となる「土臼」は、江戸時代に中国大陸から伝えられたと言われています。
この兵庫県播州の地域でも、固い板を縦に並べ、土に塩と水を混ぜて固めた臼が使われていたそうですが、明治期にはゴムロール式の籾摺り機が開発されたために、「そういえば、小さい子どもの頃そんなことやっていたなぁ」という程度の証言があるくらい。そのころの作業や道具は今やほとんど忘れられています。
いろいろいろいろ調べて考えて、今回は、手に入りやすい木材を使って、土摺臼の構造を再現してみました。
じゃーーん!
兵庫県丹波の製材所さんのご協力を得て、美しい籾摺り臼ができました。
摺り面の目立ては、こつこつと私が彫って仕上げましたとも!
今はまだピカピカですが、使っていくうちに飴色の道具になっていくといいなぁ。
みんなで籾摺り。
〜臼よ まわれまわれ でてこいお米 あの人とふたりで食うお米 ごとりん ごとりん〜
今回、太鼓唄 七海さんが選んでくださったのは、淡路島の籾摺り唄。
若い女の子の声が似合う、とてもかわいらしい唄です。
この臼は小さめなので一人でも回せないことはないですが、昔は延々やっていく長丁場の作業、二人で向かい合って臼をまわす「相ひき」がこの地域では多かったそうです。
籾摺りは若い夫婦の仕事と言われていますが、もしかしたら、慕う女の子と臼を間に向き合うポジションをねらう若者の姿もあったのかもしれません。
で、実際の作業ですが、、
臼での籾摺りは好調なものの、問題は、その後の、玄米と籾殻を分ける風選作業。
手箕を使って振り回しますが、予想どおり、これがなかなか難しいのです。
「しゃっしゃっと振って、風にのせて、籾殻だけ飛ばすねんでー」と、
先輩百姓たちは簡単に言ってくれますが、そんなに簡単にできるかー!て感じです。
結果。。。
はいつくばって、ひとつひとつ選別するみんなの姿が・・・
ピンセットを使って選別する者も。
数時間かけて、きれいに選り分けられた玄米はたったの4合でした…。
田植と稲刈りで田んぼをやりきった気になりますが、籾摺り&風選作業、あなどるなかれ…
今回も昔の人の苦労とそのときの時間感覚を体験をもってかみしめました。
ワークショップ2日目は、全3回のワークショップの締めくくりに、公民館の体育館を利用して実施しました。
太鼓唄 七海さんと仕事唄の研究会のみなさんがなさっている「仕事唄をモチーフに新しい作品をつくって伝えていく」活動を体験します。
かつて農村でうたわれていた「田植唄」をモチーフに、七海さんが現代の和太鼓の曲としてよみがえらせた「播州田植唄」という舞台作品を自分たちで演奏してみる、という、なんともスペシャルな音楽体験!!
練習中。みんなキャッキャと大興奮しています。楽しそう〜。そして、初心者と思えないくらい上手!
女性陣は、田植をする早乙女姿に変身させてもらいましたよ。
最後には、太鼓唄 七海さんと研究会メンバー、プロによる「播州田植唄」を鑑賞させていただきました。
普段は穏やかなみんなも、組太鼓を前に立つと堂々と大きくステキでした。
お昼ごはんは、本ワークショップ恒例・おっこ食堂かよち&あこちゃんによるスペシャルなベジランチ。
私は、主催者でありながら、このお昼ごはんが毎回とーっても楽しみにしていました。今回もおいしい〜しあわせ〜。
そして、ワークショップ最後には、隣町からスペシャルゲスト「吉川音頭保存会」のお二人が来訪。
「播州音頭」を継承する数少ないおじいさまたちが、私たちのために、音頭をとってくれました。
古民家に響き渡る声は、ご老人のものとは信じられないほどの力強さにあふれ、その格好よさに全員が魅せられました。
この機会は、「播州音頭と農村での仕事唄には関連があるのでは…」と、
播州音頭に取り組むなかで発見しつつある、太鼓唄 七海さんの現在進行形の仮説に沿って、実現しました。
またとない機会をつくってくださった七海さん、吉川音頭保存会のお二方、ありがとうございました!
全3回の「農村にしごと唄ワークショップ」をつうじて、仕事唄を手がかりに、昔の農作業と、農村の空気感と、芸能について、1年かけてゆっくりゆっくり、現在から過去へと旅をしました。
それぞれの人が得たものは、同じものもあれば、異なるものもあり、きっとこれからもそれぞれの時空を超えた旅は続くのだろうと思います。私も、みんなと旅したこの土地の田んぼに足をつけて、これからも旅を続けたいなと思います。
ご一緒してくださった参加者のみなさん、仕事唄監修をはじめ今昔の芸能について多くのことを教えてくださった太鼓唄 七海さん、仕事唄の研究や演奏に実直に取り組む姿勢をみせてくださったさとおと太鼓研究会・さとおと太鼓教室のみなさん、田んぼや農作業、農具などについて教えてくださった地域のみなさん、その他、遠くから関心を寄せて支えてくださったみなさん、、数えきれない方々のおかげで、今回の旅が実現しました。心から感謝いたします。
春になったら、また新しい田んぼの季節がやってきます。もちろん今年も田んぼしますよ〜。
今年も多くの方と一緒にお米を育てたられたらと願っています。
頭だけでなく、からだと心で田んぼを取り巻く空気を感じに、時に、過去や未来へも旅をしに、ぜひ田んぼにお越しくださーい。